ビームラインの高度化作業

最高のパフォーマンスを実現するために、 放射光科学研究施設のビームラインでは随時アップグレードが行われています。 一度建設されたビームラインに於いても、性能向上を目指して、 光学系位置の再検討・並べ替えなど、ビームラインの高度化作業が行われます。 技術職員はこのビームライン高度化作業にも深く関わっています。

一言にビームラインの高度化と言っても、やらなければならない事は山ほどあります。 たとえば、設計から始まり図面の確認、日程の調整、建設後の評価を行います。 実際に建設を行っていくと、初めての仕事も多く発生するので、幅広い知識を習得する必要が出てきます。

たとえばBL-17Aというビームラインは、タンパク質を構成する原子が、 立体的にどう位置しているのかを明らかにするためのものです。 ここでは光学系だけではなく実験装置も含めた高度化が計画されました。 ここで問題になったのが床から伝わってくる振動の問題です。 いくら集光などを行い、良い光を作りだしても揺れてしまっていたら・・・、 そして床の補強工事が行われる事となりました。

このようにビームライン高度化を担当する技術職員には、実験プロジェクトを見渡して建設を管理する力、 関係者との話をスムーズに進めてゆくためのコミュニケーション能力、 建築土木のような異分野への知識も求められる事となります。

ビームラインの高度化作業の最終段階においては結果の評価が必要となります。 BL-17Aの高度化に関しては、放射光ビームの質の向上についての評価、 及び床の補強工事に関して、工事前と後との振動の測定及び比較が行われました。 これらの作業はビームラインに関する技術が必要とされる分野となります。 結果、それぞれについて良好である事が確認されています。

私達の仕事は、結果を出すまで長い道のりを歩まなければなりませんが、成功した時の達成感は大きいものです。 技術職員の一人は、 「作業に関わったみんなで、ビームラインに導き出される初めての光を見た時、その印象はとても強かった。」 と言っています。 多くのスタッフの手で作り上げた光を見ると、何度ビームライン建設や高度化の作業を経験しても、感動が込み上げてきます。