放射光利用実験に関わる安全管理

放射光科学研究施設には30のビームラインがあり、 それらから分岐された実験ステーションと呼ばれる放射光利用実験を行うための場所があります。 実験ステーションの数は40を超え、 それぞれの実験ステーションでは高エネルギー加速器研究機構の職員だけではなく、 国内外約3,400人の共同利用研究者によって、様々な分野に於ける放射光利用実験が行われています。

多くの研究者が利用する放射光科学研究施設では、 安全管理はとても重要であり、放射光科学研究系の技術職員は日々安全に対する業務に深く関わっています。 装置の開発やビームライン建設、ビームラインの高度化の他に安全に関わる業務も重要となり、 場合によっては知識や技術が求められる分野でもあります。

いくら手順を決めて確認を行っても、誤った操作をしてしまう事はあります。 放射光科学研究施設のビームラインには、 たとえビームラインの操作手順を間違えても安全を確保してくれる 「ビームライン・インターロックシステム」が設置されています。 このシステムには放射線安全、ビームライン真空、 ビームラインの光学系などが故障しないようにするための操作手順が組み込まれています。 これらの操作はPLC(Programmable Logic Controller、シーケンサとも言う)と呼ばれる 入出力端子をたくさん持ったマイクロコンピュータにより実現されています。 ビームライン・インターロックシステムの設計及びPLCのプログラミング、システムの維持・管理は、 技術職員が中心になって行っています。 これらの業務には若干の電気回路の知識やPLCプログラミングの知識が必要となり、 必要に応じて学習する事となります。

放射線安全に関する操作はビームライン・インターロックで最も重要な項目です。 たとえ利用者が誤った操作を行っても、決して事故などが発生しない、 チェックに次ぐチェックといった細心の動作確認を行っています。

放射光科学研究施設の技術職員は様々な安全管理に関する業務に関わっています。次はその例です。

  • 電気安全
  • 化学安全
  • 放射線安全
  • 高圧ガス
  • 液体窒素などの寒剤に関する安全管理
  • 防火・防災
  • クレーン、フォークリフトなどの安全管理
  • その他全般

これらの安全管理業務は施設を運営する上で大変重要であり、決して妥協する事は許されません。 また、場合によっては、関連する資格が必要になる場合がありますが、 その際には状況に応じて施設の予算で資格を取得する事になります。 技術開発の業務等も重要ですが、私たちはこの安全に関する業務も、 最先端の研究を支えるためには大変重要であるとの認識のもとに、日々努力し続けています。